News & Topics
これまでの経緯(平成21年度以前)
女性研究者の現状
愛媛大学の専任教員数は、平成21年5月1日現在で865名であり、そのうち女性教員は12.1%の低い比率にとどまっています。職階別での女性比率は、教授6.7%、准教授11.7%、講師12.3%、助教18.5%、助手71.4%であり、職階が上位になるに連れて女性比率は低くなります。意思決定機関である教育研究評議会(32名)には女性の委員が1名いるのみであり、管理・運営に関わる女性の少ないことも、女性教員増員が進まない理由の一つと思われます。
学部別でみた場合、女性教員比率は、法文学部16.4%、教育学部17.5%、医学系研究科22.0%、附属病院11.2%は2桁台となっています。ところが理系学部に限ると、女性教員は、理工学研究科(理学系)7.7%、理工学研究科(工学系)4.5%(助手を除くと2.3%)、農学部5.9%と、いずれも1桁台の低い比率にとどまっています。理工農系学部全体(284名)では、5.6%(16名)であり、教授はわずか1名しかいません。この状況を改善することが本事業の最大の目標です。
一時的なポストで研究活動を行っている研究員については、合計129名在籍しています。そのうちで女性研究者の占める比率は23.3%(30名)であり、専任女性教員12.1%の2倍も高い比率となっています。専任教員と研究員を合わせた、全女性研究者(994名)は13.6%となり、1.5ポイントも上昇します。この値は、本事業の3年後の全学の女性教員比率の数値目標14%に近い値です。
一方、全学の学部生(8372名)の中で女子学部生比率は、39.7%と低くありません。大学院での女子院生比率は、修士(博士前期)課程(959名)は24.3%、博士(博士後期)課程(344名)は27.3%、修士課程と博士課程を合わせると25.1%となっています。女性教員比率(12.1%)は、女子学部生比率の3分の1、女子院生比率(修士課程と博士課程)の2分の1未満です。このような現状は、女子学生の研究意欲や将来設計に少なからず負の影響を与えていると思われ、すべての学生を社会で活躍できる人材に育てるためには、全学を挙げて女性教員を増員することが必要となります。
理工農系学部(4099名)に限ると、女子学部生比率は20.3%であり、その内訳は、理学部25.2%、工学部9.3%、農学部44.5%、スーパーサイエンス特別コース33.3%です。工学部は女子学生が非常に少なく、1割に満たないのに対して、農学部については半数近くを女子学生が占めています。理工農系全体の博士課程(223名)の女子院生比率は29.6%であり、理工学研究科については23.3%、連合農学研究科32.7%です。しかも、理工農系博士課程の女子院生は年々増加しており、平成16年度に22.3%であったものから7.3ポイントの大幅な上昇となっています。このような研究者予備軍と女性教員の比率の大きい乖離は、人材活用の観点から大学にとって大きな損失と言えます。本学が時代の激しい変化に対応して、「学生中心の大学」、「地域に輝く大学」、「世界レベルの研究」を実現するには、大学を挙げて女性教員の積極的増員に取り組み、適正な男女比に改めることが必要です。
女性研究者支援の歩み
愛媛大学の女性教員の採用促進と勤務・生活上の条件整備は、人事の適正化の一環として、平成16年からの第1期中期目標・中期計画に基づいて取組まれてきました。平成19年度には男女共同参画推進委員会が設置され、同委員会の下に設けられた専門委員会により、アンケート調査が実施されました。これらをもとに、『宣言』と『提言』が発表され、本学の男女共同参画推進は本格的にスタートしました。
提言1の女性教員の採用拡大への取り組みとして、本学では平成20年度に、教員選考の基本方針に女性を積極的に採用することが規定されました。公募にあたっては、女性の採用を積極的に行うことを明示することに努めるとともに、選考の結果、応募者の業績と能力が同等であると認めた場合は、女性を積極的に採用することが申し合わされ、女性教員増員に向けて一歩前進しました。
理学部の女性教員の比率は極端に低いことから提言2にもとづき、重点的に増員する必要があります。
提言3の理系学部における女子学生の拡充については、工学部は女子学生が9%と非常に少なく深刻です。平成21年と22年の夏には愛媛県から要請を受けて、県内の女子中高生の理系進路選択促進事業に工学部と理学部が協力しました。平成23年度から当センターにおいて女子中高生の理系進路選択支援プログラムを実施する予定です。
提言5の仕事と家庭生活の両立支援(育児支援)に関しては、平成19年4月から医学部附属病院のある東温市の重信地区に学内保育所「あいあいキッズ」が設置・運営され、0歳児から保育が行われています。看護師、医員、事務職員の他に、教員、大学院生の幼児も在園しており、仕事を安心して続けることができると高い評価を得ています。
女性教職員が非常に困っているのは、小学校に上がってからの長期休暇中の子供の世話です。このため、松山市の城北地区メインキャンパスに長期休暇中の学内学童保育所を開設する方向で検討を進めており、平成22年度の冬休みには学童保育を試行する予定です。
平成20年度からは教職員に対して育児のための短時間勤務制度が導入されました。教員には専門業務型裁量労働制が導入されており、勤務時間帯に縛られることなく仕事ができるように対応されています。また、次世代育成支援第2期行動計画(平成20年7月1日~平成25年6月30日)も策定されるなど、仕事と家庭生活の両立支援に関しては徐々に進んできています。
提言6の意識改革活動として、平成21年度は男女共同参画推進専門委員会により、講演会などが開催されました。
平成21年11月5日、日本化学会西日本大会の第1回男女共同参画シンポジウムが、理工学研究科の小島秀子教授を世話人として本学で開催されました。このシンポジウムは本学の学長裁量経費により実現したもので、全学的取組みとして一般公開の形で開催され、学会参加者以外に本学の学長、副学長、理学・工学・農学・医学の各学部の女性研究者が参加したのみならず、愛媛県からも参加がありました。本シンポジウムは、平成22年度文部科学省科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」事業への応募の下準備でもありました。これを機に学内の理系女性研究者の間に応募の機運が高まり、協力体制ができました。そして柳澤康信学長の英断により、女性教員増員のための「愛大式ポジティブアクション1プラス0.5」を盛り込んだ愛媛大学女性研究者育成プログラムが小島秀子教授を中心に作成されました。幸いにも採択され、全学的に本事業に取組むために「愛媛大学女性未来育成センター」が開設されました。
このように、「愛媛大学女性未来育成センター」は、本学の理系女性研究者の願いから実現したのです。